某所で「なんででしょうね?」という話になったのですが、どうやらいわゆるまとめサイトのようなものしか読んでおらず、「断片的な知識しかないからじゃないでしょうか」という結論に。
ということで、ゲームに直接関係ない内容ですが、年末年始特別番外編、今までそれなりに乱読してきたオジサンによる、近代戦史関連オススメ書籍の紹介です。
Kindle版があるものもありますし、年末年始のラッシュで車内に拘束された際などにダウンロード購入して読んでみていはいかがでしょうか。
壁が出てくるマンガとか、泣ける映画化作品原作小説などフィクションもいいでしょうが、事実は小説よりも奇なり、ともいいますし、この機会に戦史をひもといてみるのもよいのではないでしょうか。
それから、戦車ゲーは、WoTよりもRed Orchestra 2をオススメします(いまならSteamのホリデーセールで、500円ぐらいですし)。最初からIV号とT-34に乗ることができますし、車長、操縦手、砲手とそれぞれの役割(視点)でプレイすることができます(その2車種にしか乗れないともいう)。
近代戦史の流れをつかむ
戦艦、戦車、戦闘機……個々の兵器について書かれているもののほうがとっつきはよいのですが、そもそもの時代背景を知らなければ、「なんでゼロ戦は防御力アップしなかったのよ?」とか「なんで飛行機の時代に戦艦つくってんのよ?」とか、そういう初歩的な疑問がエンドレスでわいてきてしまうワケです。
ここは急がば回れで、大まかな歴史の流れをつかんでおきましょう。
日本史と世界史は密接に関係していて切り離せるワケがないのですが、なぜか義務教育では分割されています。そういった意味からも、日本と欧米との関わりを再確認してみるのは意義のあることではないでしょうか。
■坂の上の雲
司馬 遼太郎 著(文春文庫)
某国営放送局のドラマ版が、脚本家不在だったこともあり(原作者の遺族の口出しがヒドク、どんどん支離滅裂になっていったという噂もアリ)、登場人物の日常生活にフォーカスされ過ぎていたためアレなデキでしたが、原作が名著であることには変わりはありません。
大ロシア陸軍に「日本陸軍がどう戦ったのか?」とか、「ロシア海軍がどれだけヒドイ目にあったか」とか、「戦争をどう終わらせたのか」とか、そういういちばん大事なところがはしょられていてよくわからなかったと思うのですが、原作はもちろんちゃんとそこを描いています。
さらに日本海軍がなんで砲撃戦にこだわる人が多かったのか、なぜ第二次世界大戦の日本陸軍が夜戦の銃剣突撃だけでなんとかできると思っちゃったのかや、なんであそこまで兵站(補給など)に無頓着だったかなどなどのルーツもわかります。
それから、アジアを食い物にしようと押し寄せてきた欧米国家vs日本という大きな歴史の大きな流れについての理解を助ける内容ともいえます(欧米が悪とかそういうことでもなく、そういう時代だったという)。
戦争は正義か悪かで語るものではなく、得なのか損なのかで語るものだということ。
日露戦争当時、なぜイギリスが黄色人種の国家である日本を支援したのかということ。
どんな時代でも外交が大事なんだということ。外交の最終形態が戦争なんだということ。
そういったことがわかります。
■山本五十六
阿川 弘之 著(Kindle版、新潮文庫)
真珠湾攻撃作戦を立案したことであまりに有名な、山本五十六(やまもといそろく)連合艦隊司令長官の生涯を描くことで、日本が第二次世界大戦へ突入していく課程と日本海軍の実情が浮き彫りにされています。
当時の国内外の情勢や艦隊や航空機の運用がどうなっていたかはもとより、日本海軍と米国海軍の人事の違いなどもわかります。
ちなみに山本長官は米国通で、最初から最後まで国力の大きく違う米国との戦争には大反対していたのに、長官に担ぎ出され一番槍を務めざるを得なかったという事実が皮肉というか、長官の最期に直結しているような気がします。
第二次世界大戦時の「艦船」に関する書籍
映画や小説では、海戦の勝敗が物語の中心になりがちですが、建艦されたときの事情と実際にどのように運用されていたのか、どのように連合艦隊が興ってどのように壊滅していったのかを理解することが当時の艦船というものを理解するうえでも重要です。
■戦艦武蔵
吉村 昭 著(Kindle版、新潮文庫)
それぞれの国家が自由に建艦できなかった当時の事情から、秘密裏に大艦を建造することになるいきさつとそれにまつわる顛末、そして大艦と日本海軍、日本の運命が綿密な取材によって浮き彫りにされています。
■雪風ハ沈マズ ― 強運駆逐艦栄光の生涯
豊田 穣 著(光人社NF文庫)
幸運艦、不沈艦と呼ばれた陽炎型駆逐艦、雪風の戦いぶりから、日本海軍将兵がどんどん厳しくなっていく戦場でどのように戦ったのか……雪風が主な海戦に参加しながら、どのように激戦を生き抜いたのかがわかります。雪風は、菊水一号作戦(沖縄海上特攻作戦)でも大和と共に出撃しながら生還したという艦です。
第二次世界大戦時の「戦車」に関する書籍
残念ながら日本陸軍は海軍ほど装備の刷新に熱心ではなかったということで、あまり戦車に関しても一般的に語るべき記録がないようです。そこで機甲師団を組織し、電撃戦を生んだドイツ陸軍の戦車長の著書と、その著者に会いに行ったという宮崎駿監督の著書を紹介します。
ご存じな方も多いとは思いますが、宮崎監督、「風の谷のナウシカ」や「紅の豚」、「風立ちぬ」の兵器表現のこだわりをあげるまでもなく、戦車や戦闘機マニアなんです。
■ティーガー戦車隊 ― 第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録 オットー・カリウス著(大日本絵画)
第二次世界大戦当時の戦車と東部戦線(ドイツvsソ連の戦い)がどんなものだったのかが、これでもかというぐらいよくわかります。歴史は繰り返すということも(ナポレオンもヒトラーも冬将軍で、対ロ戦撤退)。
T-34の優秀さ(と数の多さ)、タイガー戦車の弱点。敵戦車よりも、実は対戦車砲や狙撃のほうが驚異だったこと、歩兵には向かない小柄な体格のほうが戦車兵向きなどなど、さすが本物のドイツ戦車兵の書くことはリアルです。
■泥まみれの虎 ― 宮崎駿の妄想ノート 宮崎 駿 著(大日本絵画)
上記著者のオットー・カリウスさんに会いに、宮崎監督がドイツまで行ったという逸話だけでも読む価値がある本書。宮崎監督の独特のタッチで描かれる戦記マンガといっしょに、そのときの様子も収録されています。監督のアニメ作品しか知らない人は、ビックリすること請け合いです。
第二次世界大戦時の「航空機」に関する書籍
後世のドキュメンタリー番組などでは、合理性のアメリカ軍、人の命をなんとも思わない精神論の旧日本軍というようなステレオタイプで描かれがちですが、「そもそも国力が違うんだよ」「そりゃあ、できりゃあ言われなくてもやってるよ」「厳しい限定条件の中での最適解を出したんだよ」というのがよくわかるのが零戦に関する逸話の数々です。
■零戦 その誕生と栄光の記録 堀越 二郎 著(Kindle版、講談社文庫)
零式艦上戦闘機については、ノンフィクションもフィクションもいろいろな書籍があるワケですが、まずはコレでしょう。零戦を設計開発した堀越二郎技師の著書です。
■零戦 その誕生と栄光の記録 堀越 二郎 著(Kindle版、講談社文庫)
零式艦上戦闘機については、ノンフィクションもフィクションもいろいろな書籍があるワケですが、まずはコレでしょう。零戦を設計開発した堀越二郎技師の著書です。
どれだけ海軍の要求が当時の基準から外れた高水準なものだったか、そして、それに応えるためにはできることはなんでもしたということが語られています。零戦に関する疑問は、だいたい本書で語られていることで解決します。
■大空のサムライ 坂井 三郎 著(Kindle版、光人社NF文庫)
言わずと知れた零戦エースパイロットの著書です。基本的にレーダーも無線も装備されていなかった当時の戦闘機が、どれだけ過酷な乗り物であったのかがよくわかります。
以上、有名どころをチョイスしてみましたがいかがだったでしょうか。
日本が世界から一目置かれたり、逆に目の敵にされるのは、第二次世界大戦に負けたとはいえそれだけの存在感があるからです。
日露戦争では白人国家を相手に黄色人種が勝利し、マレー沖海戦ではイギリスの最新鋭戦艦を航空機で撃沈することもしています。さらには、空母機動部隊を繰り出して戦い得たのは歴史上、日本とアメリカだけなんです。
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