2014年1月6日月曜日

黒田官兵衛、関連書籍紹介

またまた今回も番外編、ゲームとは関係ない書籍の紹介、第二弾です。

歴史は繰り返すと言うように、その時代に生きる人々にとって、なんらかしらか参考になる時代とそこに生きた歴史上の人物というのが必ずいるもの。

いまの時代、過渡期というのがいちばん相応しいと思うのですが、そんな時代に生き方が参考になるのはいったい誰なのか?

戦国時代に目を向けたとき、いわゆる英雄、例えば信長、秀吉、家康の生き様は物語としておもしろいかもしれないけれども、果たしてそれらに大臣でも実業家でもない、一般的な日本人が参考にできる部分があるのか? 感情移入できるのか?

そう考えたときに、天下統一したワケでもなければ、働きに見合った大大名になったワケでもない。自らの失敗によって幽閉されて死に損なったこともあるし、上司の不興をかって左遷されたこともある。

しかし、信長、秀吉、家康の時代、日本史の中でも過酷中の過酷といえる過渡期に、常に最前線で戦い天寿をまっとうした武将がいると言われたら興味を持たないでしょうか? それが、2014年に満を持して大河ドラマの主人公となった黒田官兵衛(黒田孝高、黒田如水)なんです。





歴史に詳しい方なら、黒田官兵衛というと、信長に早い段階で注目したこと、中国大返しを立案したこと、関ヶ原の九州で暗躍したことなど、知恵者、切れ者としてのイメージが強いと思います。

でも、ほかの軍師とは違った官兵衛の本当の魅力は、しぶとさとあきらめよさ、明晰な頭脳を持ちながらもうっかり者の一面もあるところ、質素倹約に努めながらもここぞの時には全財産を投げ打って大博打に出るところなどなど、いっけん相反するような、いろいろな要素を持った人物だということです。

人間、どんな人でも完璧ではない。いろいろな面を持っているものです。官兵衛の存在は、人間の在り方そのものなのではないかと思うのです。

秀吉、竹中半兵衛との出会い、信長への謁見、有岡城幽閉、家康や三成との確執、息子長政や毛利兄弟との関係性ほか、青山合戦、英賀合戦、高松城水攻め、中国大返し、四国討伐、九州討伐、小田原開城、朝鮮出兵、関ヶ原などなど……。

本来、フツーにたどって行くだけでドラマになってしまう波瀾万丈の黒田官兵衛の人生ですが、大河ドラマ「軍師官兵衛」配役を見るにつけ、官兵衛役の「岡田准一さんがどう考えても二枚目過ぎるなあ」(息子の長政役のほうが合っていそう)とか、側室いないし女性陣の出番はあまりないハズなのに「ヤケに女性の配役が多いなあ」とか、コレジャナイ感満載なワケですが、文句を言っていてもはじまらないので、ジブンが今まで読んできた黒田官兵衛登場作品の中でオススメのものを紹介したいと思います。

今の世の中と戦国時代は違います。それでも、状況に翻弄されながらもあきらめない。しかし、決して時節に逆らった無理はしない。そんな官兵衛のしぶとい生き方は、現代を生きるうえでも参考になるのではないでしょうか。

官兵衛は成功したのか、成功しなかったといえば、大成功ではなかったでしょう。人によっては負け犬、負け組だと言うかもしません。

だとしても、彼の残した足跡が輝いて見えるのはなぜなのか? その答えは、彼の物語を紐解いて見い出してもらいたいと思います。


入門編

二流の人 坂口安吾青空文庫Kindle

青空文庫で無料で読むことができます(Kindleも青空文庫版なので0円)。短編なのでさくっと読めて入門用にはよいのですが、題名が題名なだけにザンネンな人物であるという描かれ方になっています。

これはこれで人間味があってよいとは思うのですが、それだと黒田官兵衛のほんの一面しか描かれていることにはならず、要所要所で見せる凄みのようなものが伝わってこないかもしれません。


軍師の境遇 松本清張Kindle角川文庫

作者が作者だけに、冷静な視点で見つめて歴史の皮肉というものを描いたといった作品です。何編かいっしょになった書籍ですので、1作1作は短く、こちらもさくっと読めると思います。

「二流の人」を読んでも思いましたが、天下を獲れなかったという一点では失敗だったのかもしれませんが、戦国の世で権力の中枢に長くあって自己主張しつつ、これだけの働きをしておきながら、致命的な事態までにはいたらず、のらりくらりと天寿をまっとうしたのだから「大成功だろう」と。

黒田家は、息子長政がちゃんと大名として残すことができるように筋道をつけてあるのですし。

官兵衛への期待値の高さが、辛口な作品の出来映えに関係しているのではないかと思います。本当にザンネンは人物、明智光秀や石田三成には同情する書き方になっても、官兵衛の場合は「お前ならもっとできただろ!」といったような書き方になるのではなかろうか、と。


黒田如水 吉川英治青空文庫Kindle新潮文庫

これも青空文庫で無料で読むことができます。官兵衛の青年期を知るのにはよいと思います。

至誠の人という面を強調して描かれているため(信用があった、約束が守られ裏切られないと思われていたからこそ、数々の交渉を成功させることができたので、この描かれ方は間違いではないのですが)、大人の読者には物足りない面もあるかも。

時には息子すら犠牲にしかねない、戦国時代特有の厳しさ、きれい事だけでは乗り切れない過酷さなどは以下の書籍で補足すると吉かと。


詳細編

播磨灘物語 司馬遼太郎講談社文庫

播磨の国(現在の兵庫県)は官兵衛の出身地です。晩年の描写が少なかったと思うのですが、秀吉の天下統一の課程とそこで果たした官兵衛の役割、秀吉と官兵衛の関係性の変化がよくわかると思います。全4巻と分量がありますが、この作者ならではの緻密な取材による読み応えのある内容ということで、ぜひトライしてもらいたい一作です。


風の如く 水の如く 安部龍太郎Kindle集英社文庫

個人的にいちばんのオススメが本書です。官兵衛が主人公という作品ではありませんが、密接に関わった(影の当事者といったような)関ヶ原とはいったいどういうものだったのかというテーマに真っ向から挑んだ作品です。

作者独自の解釈がなかなか興味深いうえに、今まで疑問に感じていた歴史上の疑問について「なるほど!」と思わせてくれます。ただし、本書を最初に読んでしまうと、いきなり種明かしみたいなことになってしまいます。

大部分が本多正純の視点から描かれているということ、物語が関ヶ原が終わったところから始まるところも加味して、ほかの書籍で歴史の流れや通説を頭に入れてから、本書に取りかかることをオススメします。そのほうが、どこが作者の独自解釈の部分なのかもよりよく解るでしょう。


以上、大河ドラマにのっかってというよりは、大河ドラマでやたら颯爽とカッコイイ、コレジャナイ官兵衛像が浸透してしまうとイヤだなあ、と思って書いてみました。

この機会に、黒田官兵衛の一筋縄でいかないところ(いかなかったところ)を知ってもらえたら幸いです。


◎読んでから時間が経過し、ずでに手元にない書籍もあります。一部、思い違いがあるかもしれませんので、その際はご容赦願います。すべて印象に残っている書籍ばかりなので、読んで損をするということはないと思います。

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